住職語り 『面白の島の四方山話』

面向不背(めんこうふはい)の玉が宝厳寺に?

香川県にある志度寺に「海女の玉取り伝説」というお話があります。藤原不比等(ふじわらのふひと)が中国の唐に嫁に行った妹からもらった『面向不背の玉』を 持って都に帰って来る途中、龍神に奪われてしまいます。藤原不比等は玉を取り返そうと志度の地にとどまり、そこで出会った海女と恋仲になります。そして、海女に自分のこと(玉のことも)を話します。すると、二人の間に生まれた男の子を藤原家の正式な跡取りにと約束し、自分の命と引き換えにその玉を取り返しに行きます。自分の乳房を切り、そこに玉を入れて持って帰り死んでしまう悲しいお話として、能の「海士(あま)」で語られています。『面向不背の玉』は奈良の興福寺に納められ、現在はここ、宝厳寺にあります。ただ、なぜここにあるかは今も謎のままです。

面向不背の玉